「シマノのパワーメーターで強くなる!」モニター第1期生 本番直前まででどこまで改善した!?

text 大宅宏幸(サイクルスポーツ編集部) 
photo 山内潤也/Cycle Sports
Presented by SHIMANO

シマノの最新パワーメーターを使っているサイクリストを応援する、ユーザー参加型連載企画の第2弾。目標レースの「乗鞍ヒルクライム2023」へ向けて、ハムスタースピン代表の福田昌弘コーチによる指導を開始して約2か月。モニター生は本番直前でどこまで成長したのか。

上半身の無駄な動きがかなり抑えられた〜杉本 健さん

モニター第1期生の杉本 健さん

初回のときと同じくインドアトレーナーで10分間のFTP走を行い、そのペダリング動画の撮影とシマノ・コネクトラボでのデータ分析を行ってみた。まずは杉本さん。

「最初の頃は頭と体をかなり上下左右に振っていて、それが力のロスにつながっていました。また、こうした動きが出ていると、それと連動してペダルが高い位置にあるところからトルクをかけられず、踏み遅れが出やすくなりますが、まさにそれが出ていました。

その上半身の無駄な揺れる動きがだいぶ抑えられるようになってきました。これならすぐに足がパンパンになってしまいにくいでしょう。

また、決して太ったわけではありませんが、お腹まわりが太くなって見えます。これはプロ選手がお腹まわりがすごく太くがっしりとして見えるのと同じで、杉本さんのフォームがより体幹を意識したものに変わってきたことを表しています」と福田コーチ。

杉本さんのシマノ・コネクトラボのデータ比較

「シマノ・コネクトラボのペダリング効率とパワーの相関図を見ると、うれしい変化が出ています。

例えばペダリング効率が約60%の点を見比べると、改善前では275Wと高い出力のときにその数値が出ていました。それに対して改善後では235Wと低い出力で同じペダリング効率が出せています。つまり、余分な方向に入れる力が減ってきていることがデータからも分かります。それだけ、ペダルにこめた力がクランクを回転させる力に変わるようになってきているのです。

実は、ここが改善する人は珍しく、非常に良いケースと言えます」

「スクワットについてみて見ると、最初は大腿部が床に対して水平くらいにしか下げられなかったのですが、そこからもう少し深いところまで下げられるようになりました(※かかとを高くするサポートを入れてはいる)。

また、初回は膝だけ一生懸命伸ばそうとしいたのが、改善後は股関節も一緒に伸びるようになってきました。

この点がペダリング改善に現れています」

これに対して杉本さんは、「以前は体を振ってでもパワーを出した方がいいのかな、と考えていたところがありました。

指導を受けて、足で踏んだ力の反動をお腹というか、体幹で受け止めるような意識ができるようになってきました。これを本番でも意識して、同じようなペダリングができるようにしていきたいですね」とコメント。

ポジションの改善にもつながった〜まぬる猫さん

モニター第1期生のまぬる猫さん(ペンネーム)

「まぬる猫さんは、股関節をうまく曲げることができないという身体的な問題を抱えていたので、それを補うようにサドルを高めにし、極端な前乗りになっていました。またそれだと、ペダルに力がかかり始めるポイントが前にずれてしまう傾向があります。

それがトレーニングを経て、サドルを5mm下げ、それと連動してサドルの適切な位置に座れる(初回よりも後ろに座れる)ようになっています。見た目にすぐ分かる良い変化です。乗車位置が本来あるべきところに近づいてきました」と福田さん。

まぬる猫さんは、「実は、以前はサドルに座っているとデリケートな部分が当たってすごく痛い思いをしていました。それがだいぶ改善されました」とコメント。

「それはすごく大事なポイントで、本来のサドルの設計から外れた乗り方になっていたのが改善されたということなんです。サドルへの座り方は非常に大事で、股関節を適切に動かせないとできないんですよね。それをポジショニングだったりサドルの交換で多くの人はごまかしがちなんです」と福田さん。

まぬる猫さんのシマノ・コネクトラボの比較

「シマノ・コネクトラボのデータを比較すると、ペダリング効率とパワーの相関図が、ずっと右肩上がりを描くようになり、また点が上下でばらつかずに狭い範囲でまとまるようになってきました。パワーが上がるにつれてペダリング効率も上がっていることを示しています。また、ペダリング効率自体も上がっています」

「スクワットについては、まぬる猫さんは柔軟性が高いので初回から深いところまでしゃがめていますが、しゃがむときに爪先を微妙に動かしたり、背中をそらせてごまかしてやっていました。

改善後は背中をそってしまうのが抑えられてきました。また杉本さんと同じで、立ち上がったときにきちんと股関節が伸びるようになってきました。これができるようになった分だけ、ポジションが変えられるようになったということです」

フォーム改善とペダリングのばらつきが抑えられるようになってきた〜松島寿樹さん

モニター第1期生の松島寿樹さん

「チャンピオンクラス出場で、体力レベルも高い松島さんですが、もともとすごく特徴的なフォームでした。背中が腰椎から曲がるタイプで、股関節を伸ばすのにハムストリングスを強く使っており、重心位置が後ろよりです。あと、肩が高い位置にあります。

改善前はかなり顎が上がっていて、空気抵抗の面で不利になるのと、首・肩が痛くなりやすいので、これは改善したいポイントでした。改善後はやや顎が下がるようになってきて、そこは良い点です。これには上体を背筋側で支えるか、腹筋側で支えるかが関わっていて、これまでのトレーニングを通して、ちょっとだけ腹筋側が強くなってきたんだと思います」

松島さんのシマノ・コネクトラボのデータ比較

「シマノ・コネクトラボのペダリンググラフのデータで見ると、もともと松島さんは90°の位置できれいにトルクがピークを描くペダリングはできていて、これはこれで完成されてはいました。しかし、ペダリング効率においてばらつきが出てくるのが課題でした。

改善後はそのばらつきがだいぶおさまってきています。“同じペダリングをし続けられるようにする”というのは、今回の企画のテーマです。最初から最後まで、一番良い方法をやり続けられるようにしていくことが重要で、その同じ動作を続けられなくなったとき、パワーが下がってしまうからです。もちろん、レース本番でも」

「スクワットについては、残念ながらほぼ変わっていません。身体能力が高いので、良くも悪くも無理やりこなせてしまうんです。背筋が強いため、その分腹筋を休ませながらやり切ろうとしてしまっているのを改善するのが課題ですね」と福田さん。

松島さんは、「もともと自分の走り方には特徴があるのは何となく分かっていました。また、体の前側が弱いんじゃないかという自覚もあったので、本番までもう時間は少ないですが、それ以降の長いスパンでも考えて、克服していきたいと思いました」とコメント。

次回はいよいよ大会本番

3人とも度合いには差があったが、成長が見られた。果たして「乗鞍ヒルクライム」本番ではこれが実を結ぶのか。次回はモニター一第1期生の集大成となる参戦レポートをお届けしよう。